EPISODE2 〜「恋ノチカラ」打ち合わせ風景 |
2月も後半に突入し、「恋チカ」の脚本づくりもいよいよ最終段階を迎えた模様。
さぞかし相沢はやつれ果てているんだろうなーと思いきや、意外にも「んー、そうでもないよ」とアッサリした答えが。 「確かに時間的には余裕がなくなって来たし、風邪を引いたりとかもしてるけど・・・気持ち的には書き始めた頃とテンションが変わらないし、むしろどんどん楽しくなっ てきてる。終わっちゃうのが寂しくて」 はぁ〜、そうなんですか。さぞかし打ち合わせもピリピリムードの中で行われてるんだろうと思ってたんだけど。それならちょっと現場の様子をレポートしてくれない? と持ちかけてみると、「いいよーん」とこれまたアッサリ承諾。 「脚本のつくり方って局や作家さんによってぜんぜん違うらしいから、あんまり参考にならないかもしれないけど・・・少しでも現場の空気が伝わってくれればいいなぁ 」 というわけで、脚本ってどうやってつくられていくの?打ち合わせっていつもどんなことしてるの? そんな疑問に答えるべく、相沢がある日の打ち合わせ風景を自らレポートしてくれました! |
2月某日、午後2時。共同テレビA会議室に集合。先に打ち合わせをしていた「奇妙」チームを追い出すようにして、企画の石原さん、吉弘さん、プロデューサーの船津さんと席に着く。だいたいメンバーは私を含めていつもこの4人。たまに監督が同席する場合もアリ。場所は共同テレビが多いが、フジテレビ、TMC、渋谷のビデオスタジオ、最終回が迫ってくるとバスクという編集スタジオのロビーでやることもよくある。
まずは、私が買ってきた咳止めのクスリについて話が盛り上がる。盛り上がるっていうか、「こんなの見たことない」「一日三回で、一回六錠?! 飲みすぎだろう」 「計算すると一週間でなくなっちゃうよ。ボッタグリじゃん」と人が買ってきたものをみんなして散々批難する。こんなふうにして雑談からウォーミングアップ(?)し、時間によってはここで食事に突入することもあるが(ダメじゃん!)、この日は意外とスムーズに打ち合わせが始まった。 |
ここで、一回分の話がつくられるまでの過程を大まかに説明しておくと・・・ まずはプロットと言って、話の骨組みというか、あらすじみたいなものをつくる。 前回からの流れを踏まえて、何をどう展開させるか、どんなテーマを中心に置いて、どこまで話を進めるか。それぞれが思いつくことを思いつくままに口にして、面白い 方向を探っていく。この作業がいちばん重要で、時間もかかるところ。時には煮詰まって誰も喋らなかったり、誰かの一言がキッカケになって、いきなり怒濤のように喋っ たり。かなり変な光景かも(笑)。 そして、それを私が家に持ち帰ってまとめ、まとめたものを再度確認するために集まり・・・問題があれば修復をして、実際の台詞を起こす作業に入る。 プロットをもとにエピソードを膨らませ、3日ほど家にこもって書き上げたベーシックな原稿に、今度は直しを加えていく。こことここの場面を入れ替えた方がより効果 的じゃないか、この台詞をもっと整理して主人公の心情を分かりやすくできないか、など、みんなの意見を踏まえて磨きをかけ、それを「準備稿」として印刷。 さらに、最後に尺(放送時間)の調整をして「決定稿」に至る。 ・・・とまぁ、こんな感じ。 で、この日の打ち合わせは第9話の尺調整を済ませ、その後第10話のプロットづくりに取りかかるという内容。放送前なので詳しくは触れないでおくが・・・かなり 早いペースでカタチが見え、みんなの意見が活発に飛び交う。いつもは石原さんの「お仕事話モード」と吉弘さんの「恋愛話モード」とのせめぎ合いがおかしいんだけ ど、さすがに最終話直前ともなると、足並みが揃ってくるものだ(実は石原さんはまとまりかけた話をドカーンと引っくり返すのが得意で、私たちはそれに頭を抱えつつ 結構楽しんでいたりして、何となくバランスを保ってきた 笑)。 私は話の大筋、つまりカタチが見えていても、「どうしても伝えたい台詞」とか「どうしても描きたい場面」とかが頭に閃めいて、「書きたい気持ち」がこみ上げな いと安心して家に帰れない。だからいつも閃きが降ってくるまで、みんなにムダ話につき合ってもらう。それが降ってきた時は途端に興奮状態になり、具体的な台詞を喋 りつつ自分で感動して「いい話だ〜。早く帰って書きてぇ〜」と叫ぶので、忙しいみなさんはひたすらその言葉が出るのを待っている。と思う。 |
その閃き・・・いわゆるキッカケは、ストーリーのテーマそのものであることもあれば、たいして関わりのなさそうな、何げない瞬間だったりもする。
いくつか例をあげると、第3話の徹夜明けのべーグル屋のシーン。籐子、貫井、壮吾がピョンピョン飛び跳ねながら会話をするというエピソード。第4話の籐子の台詞 「吉武さんは、貫井さんになりたいんですよ」、貫井が吉武に言う台詞「あなたが大嫌いなのはあなた自身です・・・でも僕は、あなたが好きでした」。第7話の壮吾が 籐子を抱き締めた後に昔飼っていた犬の話をし、「チロ〜」と号泣するくだり。などなどなど・・・他にもいっぱい。 ムダ話の最中に、おもむろにカメラを取り出し、シャッターを押した。 「すみません、ホームページに載せたいので自然にしててください」と言ったのだが、みんないきなり顔を寄せ合い、「打ち合わせしてます」の態勢をつくる。石原さ んは「激論風」とポーズを決めるが、よく見ると手に持ってるのはスポーツ新聞。説得力がない。 そんなバカバカしいことで盛り上がりつつ、ホワイトボードの前をウロウロするうち、ふいに第10話のキッカケをつかむ(ホントだよ)。ちょうど次の打ち合わせに向 かわなければならない時間だった石原さんは、「後は任せた!」と笑みを残し、ひと足先に退場。吉弘さん、船津さんも収録現場へ戻ると言うので、しばらく「書きたい 気持ち」を高めてから、午後6時半、私も会議室を後にした。 みんなの予定が合えば、夕食を食べながらもっと細かいデティールを詰めることもしばしば。この日のようなパターンの時は大抵友だちを呼び出して息抜きをするが、咳に悩まされていたのでまっすぐに帰宅。軽くPCに向かった後、みんなに散々言わ れたクスリを飲んでベッドに入った。やっぱり効かなかった。 以上、ある日の打ち合わせ風景でした。 Tomoko Aizawa |