REPORT 19 |
2003.06.20.Fri |
速く通り過ぎてしまうことを願うだけの日々になりがちな梅雨。でもアジサイが最も美しく、そして雨の日々を潜り抜けるように表れては消えてしまう太陽が、本当に眩しく感じる季節でもある。そして、そんな風景には、ピアノが似合う……と思っている。 今月のゲストは、小谷美紗子さん。相沢もかねてから会いたいと願っていた女性。小谷さんは、少し恥ずかしそうにスタジオに訪れた。 |
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今回のアルバムはレコード会社の移籍後初めての作品ということで、何かチャレンジなどはあったのかを伺うと、 「移籍をする間っていうのは、リリースの日程も決まっていなかったので、自分が書きたいときに書くという、デビュー前の頃、デビューするのかどうかもわからずに、自分がただただ曲が書きたくて書いていたと言う頃と、すごく似ていたので、初心に帰るというか、やりやすかったし、新鮮でした」 「いいですね〜。そういう気持ちって、忘れたくなくても段々慣れてきてしまうものだから。そもそも(小谷さんにとって)音楽というものは幼い頃から自分の傍にあったと思うんですが、(今の様に)人前で歌ったりするっていうのは、いつ頃から意識し始めたんですか?」 「そうですね、すごいちっちゃい頃から、絶対音楽家にはなるぞ! と思ってて、たまたまそれがシンガーソングライターという形で叶ったんですけど、ずっとピアニストになりたいとか、作曲家になりたいとか、常に音楽家にはなりたいと思ってました」 「今回のアルバムの中で、特に自分的に試行錯誤したとか、思い入れの強い曲とかってありますか?」 「レコーディング自体が楽しかったんですよ、全部。迷うって言うこともそんなになかったし、中でもインストゥルメンタルですね。ピアノ2台でやってる曲とかは、アレンジも自分でやったので、思い入れが少し強いかもしれない……」 「デビューした頃と比べて、自分の中にある伝えたいテーマとかは、常に一貫している感じですか? それとも微妙に広がったりとか変わったりとかしてますか?」 「ラブソングとかは、年相応に20歳の頃は20歳のラブソングだったし、今は26歳のラブソングだし、本当に自然に形を変えていっているって感じですけど、メッセージソングに関しては、自分が大事にしていることっていうのは変わらないので、世の中にどうしても言っておきたいとか、共感しておきたいと思うことはずっと変わらずありますね」 「小谷さんのラブソングって、最初のアルバムの頃とかはすごく切迫した愛の歌という感じがして、それも良かったと思っていたんですけど、最近そこにやわらかさとか優しさのようなものが加わってきて、あーやっぱりそういうのも、年齢によって色々な恋もしてきただろうし、色々あったのかなーって思ったんですけど」 「いろいろありましたね(笑)」 「ありましたか!(笑)」 「26歳になると、あまりにもひしひしと現実的に悲しさが伝わってくるので、それをそのまま歌にできないというか、あまり切羽詰ったラブソングにしてしまうと、悲しくて自分が聴けないし歌えないっていうところもあるんで、辛い恋をすればするほど、自分にも優しく歌うようにしています」 「はぁ〜、逆にってことですよね。こういうことを聞いていいのかわかんないんですけど、恋に対しては臆病な方ですか? それともガッとのめり込んでいくタイプですか?」 「あー、25まではガッと行く感じでしたけど、ここ最近……」 「ちょっと慎重になったかなみたいな?」 「……っていうか、もう怖いですね」 「怖いですかぁ? まだ26じゃんねぇ(とスタッフにも視線を向ける相沢)。でも、そういうのってあるのかな。またこれがね、30越えると怖くなくなりますよ!(笑)なんて、こんなこと言っていいのかな。でもそこをいっこ越えたラブソングを、またいつか聞けることを楽しみにしてます」 ここで、「普通だったら何きれいごと言ってるの? って言われそうなことをすごく真正面から歌っている曲で、そこが凄く好き」と相沢が紹介し、『Gnu』が流れる。 『Gnu』の中の「キミが生きてさえいてくれたら僕を嫌いになってもいい。君がここにいるのは当たり前じゃない」という詩に、とても衝撃を受けたと語る相沢。 「恋愛をしているときって(傍にいること、愛してくれていることが)当たり前に思っちゃうじゃないですか。だから戒められたような気がした」という。 「小谷さんにとって、愛とか幸せとかって、どういう風に捕えている人なのかなって、ずっと気になってたんですけど……」 唐突ながらも、深い質問が小谷さんに降りかかる。 「そうですね……。私は自分では、家族にすごくたくさんの愛情をもらって育ってきたって言う自覚があって、もちろん世の中の人も同じように思っている方もいると思うんですけど、その親からもらった愛情っていうのをどうやったら他人に向けることができて、なおかつ他人からももらうことができるかっていうのが、大きな私の人生のテーマですね。すごく難しいことでもあるけれど、でもそれを簡単にこなしている夫婦の方とか、友達同士とかたくさんいるので、その人たちみたいにどうやったらなれるのかなと考えたり。 親友に関しては、私も友達には恵まれているので、家族と同じような愛情のやりとりができるんですけど、恋愛に関してはまだ、それができていないので、どうやったらできるのかなって思っています(笑)」 「そこはなかなか難しいところだなあって思いますよね。(そんな小谷さんは)へたしたら何言ってんだよ、甘えたことを、って言われそうなことを、何のてらいもなく言えるっていうのは、愛に溢れてる人なんだなって感じがします。だから偽善ぽくないっていうか、本当にそういう方なんだなあって思えるんですね」 そして、4月・5月と行われてきた、弾き語りツアーの話へ。 「弾き語りツアーはもう何度も経験されていると思いますが、今回も、手ごたえはありましたか?」 「はい、そうですね。やっぱり歌とピアノだけなので、会場をその音だけが支配してしまうというところがあって、お客さんの反応も自分に伝わってきやすいし、私も伝えやすいですね」 「ライブをやるとき、楽しもうとするタイプですか? それとも自分を追い込んでいくタイプですか?」 「追い込んでいくタイプですね。弾き語りに関しては、ステージに上がったら頼れるのは自分しかいないので、そういうところはやはり戦いなんですよ。で、その後の打ち上げだけを楽しみに頑張るぞ! って感じなんですけど(笑)」 「お酒は飲めるんですか?」 「少し、飲めるようになりました。昔は飲めなかったんで……」 「ひとりで人前に立つという勝負な感じと、またバンドを引き連れてのライブっていうのは全然感覚が違うものですか?」 「違いますね。もうほんとに、セッションをどれだけ楽しんで、私がどれだけ楽しんでるっていう姿をファンの人に見てもらって、一緒に楽しさを共感できるかっていうところがあるんで、私自身がどれだけ楽しめるかっていうのを大事にしています」 「ライブで、あーなんか足りなかったなって思ったときは、どうなっちゃうタイプですか?」 「そのライブの日は、すごい落ち込みます。でも打ち上げとかでは落ち込んでないふりをするんですけど、ホテルに帰ってひとりになったとき、落ち込みます! で、次の朝は大丈夫ですけど(笑)」 来月はニューアルバム『night』をひっさげてのツアーが予定されている。 東京では、渋谷AX。リハーサルもまだこれからだということで、楽しみだ。 後半は、小谷さんの思い出の曲ということで、イースタンユースの『青すぎる空』を聴きながらスタート。 「今から4年くらい前に、ディレクターさんの車に乗っているときにこの曲を聴かせてもらって、その時はそんなに歌詞とかは頭の中に入ってきてなかったんですけど、そのイースタンユースというバンドから出てきている力みたいなものを、体中で感じてしまって。雷が走ったみたいに。で、これ誰〜? って(笑)。それがイースタンユースと解ってからずっとファンなんですけど、たまたまイースタンユースのヴォーカルの吉野さんが私の曲を聴いてくださっているという事で、一度お手紙をいただいたんですけど……。 私にしてみれば、雲の上の人というか、すごく大ファンな存在なのに、その方から自分に手紙がくるなんてもう、えーーーっ! みたいな感じで(笑)。そこからこう、交流が始まったんですね。前回のアルバムでも私の曲のアレンジをやってもらったり、あとは……飲み歩いたりとか」 「お互いに何か共鳴するところがあったんでしょうね。解るような気がします。他にも、ナンバーガールとか、スーパーバタードッグとかが好きという風に伺ってるんですけど、音としてはハードめな(笑)。……こういうどーんとしたのが好きなんですか?」 「なんなんでしょうね。私、その、ジャンルってあるじゃないですか、ロックとかパンクとかいろいろ。それがよく解ってないんですよ。クラッシックとロックが違うとかって言うのは解るんですけど、他のはどれがどれだか全然解ってなくて。今はそれを覚える必要はないかなと思っていて……。ベートーベンも好きだし、ナンバーガールも好きだし、私にとっては同じものなんですよ、音楽っていう意味では」 ここからは、小谷さんの幼少時代の話に突入。 「プロフィールを拝見すると、2歳からクラシックピアノを弾き始め、6歳でビートルズを聴いて作曲をはじめたと言う事なんですけれども、もうほんとに物心ついたらピアノの前に座っていたって感じですかね?」 「そうですね、いつ習ったのかとかは、あまり記憶にない……」 「じゃあ、もうずっと(ピアノと)ひと時も離れずに過ごしてきたという感じですよね。ピアノを愛してますか?」 「愛してるというか、もう一部ですかね。生活に必要なものという感じです」 「さっき、音楽家にはなりたいと決めていたと言ってましたけど、ピアニストになろうと思っていた時期もあったんですか?」 「ありましたね、小学校2.3年生くらいまでは、ピアニストになる! と思ってたんですけど、私の手がピアニストに向いてない!! って、なんか自分で解ったんですよ。ま、ピアノと同じくらい歌も好きだったので、歌にしよう、歌の方が私に向いていると」 「え、それが小学生の時に?」 「はい」 「……なるほど。……。やっぱなんかすごいなあ」 「その後にオーストラリアに留学されてますが、オーストラリアという地を選んだのは、どういう理由が?」 「治安が良くて、物価が安い」 「!(笑)……割と現実的な(笑)あはは、これもいいですね(笑)。でも17歳の時に単身で留学されたわけですけど、やはりそこでの経験というのは大きかったですか?」 「やはり外から日本を見るっていうのは大事ですね。日本の良さがすごくよく解る、切羽詰ったところで、例えば食物もそうだし、言葉もそうだし、習慣も、すべて愛おしくなるので、良かったなと思います」 「そういう経験を踏まえて帰国され、改めて日本でやろう! と。……でもね、さっきスタッフとも話してたんですけど、小谷さんて神秘的な方ですよね。だから小谷さんてどんな人なんだろう? って。見えないんですよね、私生活が」 「すっごい解りやすいですよ。物凄く普通ですよ」 「毎日どんなことしてるんだろうとか、何食べてるんだろうとか(笑)そんなこと聞いてもいいですか?(笑)趣味とかはあるんですか?」 「趣味はぁ、えーっとですね、昔は馬と触れ合うことが好きでしたね。でも最近は買い物とかすると、結構可愛い袋に入れてくれるじゃないですか、その袋とかを……ふっ(思わず自分で吹き出す小谷さん)……集めてるんですよぅ」 「あはは、可愛い! 捨てられないんですね。それは意識的に集めてるんですか?」 「意識的に(笑)すごいことになってます。袋が欲しくて、いらないものを買ったりします(笑)」 「ほんとに〜? その袋って何かに使うわけですか?」 「使おうと思ってるんですけど、使えないですね。そのままおいてあります、綺麗なままで(笑)」 「あははは。こういう話が聞きたかったんですよねー。ちょっと身近な感じがしてきましたけど、お友達とは遊びに行ったりとか、運転とかはするんですか?」 「そうですね、事務所の楽器車とか、たまに」 「楽器車!? へぇ。……でもそんなにアウトドアなほうではない感じですか? スポーツとか」 「あのー、恋人がいたときは、毎週キャンプに行ってました」 「アウトドアな彼だったんですね。キャンプ……自然とか動物とか好きなんですね。じゃあ都会に住んでいて嫌になりませんか?」 「うーん、嫌になりますけど、その分自然とか田舎のほうの美しさ、愛しさが増しますね」 「なんかさっきから聞いてると、ひとつの経験をすることによって、今まであった当たり前のこととか日常を、見つめ直すという、すごく前向きな方なんですね。それって幸せになれる人の、ひとつの才能だと思うんですよ」 「幸せになれます? 私」 「なれる……っていうか、すでに幸せでしょ? 幸せじゃないですか?」 「ま、仕事は楽しいです(笑)」 「あのー、何、何? プライベートは辛いの?(笑)」 「あのー、LOVEの方が、めっきり……なので。だから今年はこのまま行ったらやばいなと不安です」 「それは、自分からときめけないっていうことですか?」 「いや、すぐときめくんですけど、見る目がないんです」 「あはは(笑)、見る目がない……。この話は、どこまで突っ込んでいいんですか?」 「ちょっとこの人じゃないかもって思えないんですよ。すっごいのめり込んじゃって、周りの人からあいつだけはやめなさい! って止められるんですよ……」 「あーなるほど。でもそういう恋でも、自分は好きになって良かったって思えるタイプですよね? それは幸せになれるタイプですよ。まだ26だし(笑)。これからですよ〜。これでもかっていうくらい素敵な恋がやってきますよ〜」 満面の笑みで「嬉し〜い」と、小谷さん。 「そうなった時には、また素敵なラブソングを作って欲しいと思います。それを聞いて、私は、あ、良かった、幸せになったんだ小谷さん! って思いますから。そんな日が来るのを楽しみにしてますよ」 ここでもう1曲、小谷さんのセレクトナンバー、『Seasons Of Change』を。SING LIKE TALKINGの佐藤竹善さんとは仲良しだという小谷さん。日本にもこんなに歌の上手い方がいたんだと、感激したという。 最後に今後の予定を聞く。 夏に向けてたくさんのイベントライブ、そしてツアーが予定されている。イースタンユースとのジョイントライブもあり、憧れの人と同じステージに立つ喜びを語る小谷さん。最後に、小谷さんがチャレンジしたいことを尋ねると、 「やりたいことは一杯あるんですけど、もうちょっとバンドとしての活動をしたいかなと。私はおたまじゃくしの譜面は読めるんですけど、コードが読めないんです。だからバンドと一緒にアレンジをしたり、そういうことをしてみたいですね」という答えが返ってきた。 「今回のアルバムでも、ご自分でアレンジなさった曲がありますけど、いつかは全部自分でアレンジしてみたいとか思いますか?」 「うーん、ま、ミュージシャンと一緒に創り上げていきたいですね」 「ひとりでやることもすごく素敵ですけど、人と刺激しあって創り上げることも素敵なことだったりしますからね。これからも、素敵な音楽をたくさん創り上げて、輝いていってほしいなと思います」 「ありがとうございます」 深々と頭をさげ、そしてちょっと笑った小谷さんは、とってもキュートだった。 小谷さんが最後に見せてくれた、微笑の意味を考えてみる。 ゲストとして相沢といろいろ話した締めくくりとしての微笑み、それもある。もうひとつの意味があるとしたら、相沢の言葉に対して、小谷さんの中には、少なからず輝くことや幸せになることの確信が生まれていたからではなかろうか。 ひとつの経験をすることで、当たり前のことを前向きに見つめなおすことができる。そんな人間でありたいと思った。 |
− ON AIR LIST − 1 Off you go/小谷美紗子 2 Gnu/小谷美紗子 3 Blink of stars/小谷美紗子 4 青すぎる空/イースタンユース 5 Seasons of change/SING LIKE TALKING 6 真夏の午後/相沢友子 |
〈うさぎのちょっとひとりごと〉 |
小さな小さな体で大きな大きなグランドピアノを操つり、不思議な空気感をまとった女性……、それがデビュー間もない頃の小谷さんの第一印象。 昔から醸し出していた落ち着いた雰囲気はそのままでしたが、恋愛のこと、紙袋のこと、キャンプのこと……、色々なことを語る小谷さんを発見できちゃった。うふふ。 |