大切な時間
- 2006/07/06

親友の結婚祝いを買いに、本人と共にデパートへ行った。
まだ実家で暮らしていた頃、よく利用していたところ。
久しぶりに行ったら新しい改札口ができていたり、
お店の配置もすっかり変わっていたりで迷子になりかけてしまった。
でも、そこに流れている空気はおんなじで懐かしい。
オーガニックのランチバイキングを食べ、
彼女のリクエストでシャンパングラスとシャンパンを買った後、
屋上でのんびりとお喋りを楽しんだ。
仕事に行き詰まり、ずっと家にいるのも親に対して申し訳ないし、
かといって遊びに出かけるお金もないし・・・という状態だった時期、
デパートの屋上に来ては本を読んだり音楽を聴いたりして、
どうにか一日をやり過ごしていた。
制服姿で勉強をしている女の子、
ひとりでボーっとしているスーツを着た男の人、
黙りこくっている恋人たち、その周りを走り回りながら笑い転げる子供たち。
時間を持て余すうちに、彼らがそれぞれどんな事情を抱えているのか、
これからどこへ向かっていくのかを事細かに想像し、
いつしか頭の中で物語を構築するようになっていた。
そうして生まれたのが、「cover」という小説だ。
思えばここから物書きとしての自分がスタートしたんだな。
そう考えると、あの不安と焦燥感でいっぱいだった日々も、
何だかキラキラと輝いて見えてくる。
今の私が私であるために必要不可欠だった、かけがえのない大切な時間。
何もかもうまくいかなくて、途方に暮れてしまうことってあるけど、
本当はそういう時こそ、大きな力が生まれるチャンスだったりするんだよね。
・・・そんな話をしていたら、あっという間に日が沈んでいった。
「またね」と手を振り合って、地下鉄の改札へと向かう彼女を見送る。
今にもスキップしそうな足取り。幸せの翼が生えてきそうな背中。
よかったね、胸の痛みに耐え切れず涙で濡れていた夜も、
そろそろ輝き始める頃だよ。