Q&A
- 2005/07/22
恩田陸さんの「Q&A」という小説。
ずい分前に雑誌で紹介されているのを見て、面白そうだなぁと思った。
書店に行くたびに探してみたけど見当たらず、
でも注文しようとまでは思わなくて、結局そのままになってしまった。
そんな折、恩田さんの新刊「夜のピクニック」が賞を獲り、
過去の作品がズラリと書店に並んだので、購入。
「夜の~」を先に読んだ後、しばし部屋に寝かせてあったんだけど(笑)、
このたびようやくにして読むことができました。
長々と前置きを書いたのは、何で早く読まなかったんだろうという思いと、
ここまで構えて読んだのに期待以上に面白いってすごい!という思いから。
とある住宅街の巨大なショッピングセンターで、奇妙な事件が発生。
中にいたおよそ4千人の客が一気にパニックを起こし、出口に殺到、
多くの死者と負傷者が出た。
小説は主にその時現場に居合わせた客やレスキュー隊員、
ショッピングセンター側の弁護士などに対して行われる
質疑応答のみで構成されている。
最初は火事が起きたとか、毒ガスが捲かれたとか、
様々な憶測が飛び交うんだけど、話を聞いていけばいくほど、
なぜパニックが起きたのか、その原因が何なのかが分からなくなっていく。
犯人も原因も存在しない、理由がないということへの
底知れない恐怖と無気味さ。しかも質問している人間の方も、
いったい何者で何が目的なのか、はっきりしない。
でも、そこに描かれている人間の心理はどれもゾッとするほどにリアルで、
思わず考えずにはいられない。
もし自分がその場にいたら、果たしてどうなっていただろうか、と。
印象としては映画「CUBE」を見た時の感じに近いかもしれない。
いったいどうしたらこんな発想が浮かんでくるんだろう。
ただただすごい、これは日記に書こう・・・と思っていたら、
またしても悲しいニュースが流れましたね。
タイミングがタイミングだけに、この小説を「面白い」と言ってしまうのは
不謹慎かとも思ったのですが、あえて書くことにしました。
「Q&A」を読むと、世の中で起きている悲惨な出来事は、
決して遠い世界の話なんかではないんだ、と実感するから。
私は小説の中で、レスキュー隊員が語った言葉が忘れられません。
「あそこは、みんなにとっての日常だった。
いつもの場所、ありふれた当たり前の場所だったんです。
だけど、そうじゃなかった。そんな場所でみんな死んだ。
日常など、どこにもなかったんだと悟ったんです」