アイザワさん
- 2002/05/01
この間、「アイザワさん」という女の子と知り合いになった。
スポーツジャーナリストを目指して上京してきたばかりの、若干19才。
音楽仲間の集りに飛び入り参加してきたんだけど、これがまぁ何というか、
とにかく小生意気で怖いもの知らずな女の子だった。
「自分だけは特別、みんなとは違う」という根拠のない自信を持ち、
「絶対に何かできる、やってやる!」という漠然とした思いこみだけで
ひたすら突っ走っている・・・純粋といえば聞こえがいいけど、
他人の意見なんてまるで聞く耳持ちませんって感じなんだよね。
別にその子が気に入らなかったわけではない。
むしろその逆だと言えるけど、
名前のせいもあるのか昔の自分を見ているようで、
少々いたたまれない気分になった(笑)。
デビューしたての頃にやってたラジオのテープを聴いたり、
雑誌に載ったインタビュー記事を読み返したりした時に、
「ゴメンなさい」と誰にともなく頭を下げたくなる感覚に近い。
若さってのは、恐ろしいものですよね。
「お前はいったい誰なんだ?!」って突っ込まれそうな偉そうなことを、
何の衒いもなく言えちゃうんだから。
それでそれが赦されるどころか、「いつまでもそのままでいてくれよ」
って、応援する気にさせちゃうんだから。
「ああ、あの頃私の周囲にいた人たちは、きっとこんな気持ちで話を
聞いてくれてたんだなー」って、そんなことをふと考えてしまいました。
その数日後かな。
久しぶりに渡辺美里さんのコンサートを観に行った。
懐かしい曲がいっぱいで、聴いてた頃のいろんな景色、風の匂い、
光の温度なんかが鮮明に蘇ってきて、切なさで胸がいっぱいになった。
そこで私はまたしても「アイザワさん」に会った。
19才のあの子ではなく、今ここにいる私でもなく、
「10years」をリアルタイムで聴いていた、かたくなな目をした女の子に。
彼女は会場の隅に立ち、じっとこっちを見つめるだけ。
「私はまだアナタの中にいるでしょ。
何物分かりのいいフリしちゃってんの?」
そう言われてるような気がして、私は思わず苦笑いをしたのでした・・・